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国分寺「カフェ おきもと」開店から半年 洋館を受け継ぎカフェに再生

「カフェおきもと」の店長久保さん

「カフェおきもと」の店長久保さん

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 国立に「カフェおきもと」(国分寺市内藤2)がオープンして半年が過ぎた。国立駅から徒歩8分、国分寺崖線の高台にたたずむ洋館と和館は昭和初期に建築されたもの。国指定有形文化財を目指し、洋館は昨年10月4日、カフェに生まれ変わった。

「カフェ おきもと」内観。当時のままの家具や調度品が並ぶ。

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 建物は1932(昭8)年、広島県出身の貿易商の土井内蔵(くら)さんの別荘として、アメリカで西洋建築を学んだ川崎忍さんにより建築された。1937(昭和12)年に海軍少将の沖本至さんに渡り、洋館の隣に木造平屋建ての和館が建てられ、沖本さん没後も次女・京子さんと三女・智子さんの2人が住み続け、京子さんは医師に、智子さんは自宅でピアノ教室を開いていた。

 店主の久保愛美(なるみ)さんは、17年前に沖本邸の近所に引っ越してきて、沖本姉妹との親交が始まり、当時80代だった姉妹を気に掛け、無償で世話をするようになった。建物は竹やぶと雑木に覆われ「人が住んでいると思えない、ジャングルのような状態だった」と当時を振り返る。

 やがて、病気で余命宣告をされた京子さんは、後継ぎもなく残された妹の智子さんを気に掛け、沖本邸の今後について相談を持ち掛けた。その2年後、京子さんは97歳で他界。智子さんを自宅で介護していた時期もあったが、久保さん自身が体調を崩したこともあり、智子さんは施設に入所、現在も元気だという。

 没後、建物を譲り受けるも、窓は割れ、屋根や壁の傷みもひどく、物があふれ、庭もジャングルのようだった。当時は建物の価値が分からず600坪の敷地に老人ホームを建てるという案もあったが、沖本姉妹が愛していた家で、久保さんも木や植物が好きだったことから「この場所を残そう」と決意。その後、国分寺市の「ふるさと文化財課」の職員が来て、建物のルーツが徐々に浮き彫りに。国分寺市では国指定有形文化財を目指しているが、固定資産税や建物の維持のため、智子さんとも相談してカフェを開くことになった。

 換気口や回転扉など建物の状態をできるだけ残し、家具も当時のものを使用。立ち枯れしたコブシの木を使ったダイニングテーブルには、かつて開かれていたクラッシック音楽の鑑賞会「ボアの集い」のロゴマークにも描かれるコゲラがつついた跡も。人を招くことが好きだった智子さんは、カフェへの変身を大変喜んでいるという。

 久保さんは「レコール・バンタン」(渋谷区恵比寿)のカフェコースに通い、同校講師でフードコンサルタントの宮崎政喜さんがメニューを手掛けた。現在は、近所の住人やパートで知り合った友人たちが店を手伝っている。

 メニューは、牛肉のオムハヤシライス~ふわふわ卵に特製デミグラス~(1,375円)、煮込みハンバーグとDELI盛り合わせ(1,450円)、欧風カレーとキーマカレーのメリメロプレート(1,375円)、クラッシクチョコレートケーキ(660円)、バスクチーズケーキ(605円)、贅沢(ぜいたく)フルーツのフレンチトースト(1,280円~)など。

 「住宅街にオープンすることで心配もあったが、建物を生かしてくれてありがとう、ずっと見守っていたよ、と言ってくれる方もいて、皆さんが協力的で、温かく見守ってくれていることに感謝している」と久保さん。「庭や建物の細部に、どこか懐かしさがあり、ここには皆さんの心象風景があるのかなと思う。ぜひ足を運んでいただければ」と来店を呼び掛ける。

 営業時間は11時~17時。火曜・水曜・木曜定休。

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