国文学研究資料館(立川市緑町、TEL050-5533-2900)で現在、特別展示「近衞家陽明文庫 王朝和歌文化一千年の伝承」が開催されている。
「陽明文庫」とは、1938(昭和13)年に当時の内閣総理大臣近衞文麿(近衞家29代当主)が、仁和寺の北西部に設立したもの。藤原道長自筆の日記である「御堂関白記」(国宝)、名筆の集大成である「大手鑑」(国宝)、美麗な唐紙に和漢朗詠集を書写した「倭漢抄」(国宝)など、五摂家の筆頭である近衞家が宮廷文化の中心として守り伝えてきた貴重な文書や宝物を収蔵している。
今回は、同文庫に近衞家伝来の品の中から、王朝和歌文化に関連する資料を前期・中期・後期にわけ138点を展示。「中でも、平安時代開催された歌合のほとんどを網羅する唯一の本である国宝『類聚歌合』(『二十巻本歌合』とも呼ばれる)を3期に分けて全巻展示するのは本邦初の試み。恐らく今後しばらくは同じような展示は行われないと思う」と話すのは同館管理部総務課企画広報係の三浦さん。
近衞家と天皇家の深い関わりのなかで伝えられた宮廷歌会に提出された懐紙などのほか、「御堂関白記」は各期ごとに展示箇所を変えて展示し、現在は、歴史の教科書でも有名な「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」の歌を詠んだとされる箇所を展示している。
すでに前期は終了し、現在は中期の展示を行っている。「団体のお客さまにもご来場いただき『これほどのものが出品されているとは予想もしなかった』と驚きの言葉を頂いた。研究者の方々からも『類聚歌合』の実物をこれほど一度にじっくりと目にするのは初めてといった感想も多い」という。
「展示品のうち、国宝・重要文化財・重要美術品に該当する作品が約半数。これだけの文化財を立川でゆっくりと見ることができる機会は恐らく初めて。研究者の方のみならず、立川近郊にお住まいの方ぜひ見ていただきたい。そして、1000年の年月を伝えられてきた文化財の息吹を感じ、その美を心ゆくまで鑑賞していただきながら、こうした文化と文化財の意義とそれを伝えることの意味についても思いを巡らしていただければ」とも。
開催時間は10時~16時30分。観賞料300円(高校生以下無料)。中期は11月20日まで。後期は11月22日~12月4日。月曜休館。