東村山市のバス会社「銀河鉄道」(東村山市青葉町2)は3月15日から、65歳以上を対象に同社の路線バス乗り放題の「お達者定期」を販売している。
「地元の交通過疎地域を無くすこと、生涯安心して暮らせる町をつくることが、当社の使命の一つ。地域の高齢の方々がどんどん外に出て、いつまでも生き生きと元気でいていただけたらという思いで発行している」と同社経営企画室長の村井優子さん。「お達者定期」は税金補填(ほてん)を受けずに自前で運営している。
同市内を循環する「青葉恩多町線」と、小平駅と国分寺線を結ぶ「小平国分寺線」の2路線が9,990円で1年間乗り放題となる。収入や居住地に関係なく65歳以上なら購入でき、5月1日現在で117人が購入している。沿線の店や見どころを紹介した小冊子「ぎんてつ」「お達者マップ」なども配布し、高齢者が外に出たくなるようなきっかけづくりも提供する。
同社は幼いころからバス好きだった社長の山本宏昭さんが1999年に創業。山本さんは大学4年の就活時、バスの運転手は高卒採用しかなかったことから実家の酒店を手伝うことにしたが、夢を諦められずに23歳で中古バスを購入。休日に地元の住民を乗せて観光バスを運転し、36歳で同社を立ち上げた。同市のコミュニティーバスの運行業者に選定された後、路線バス事業にも参入。「戦後、路線バス事業に新規参入した業者はなく、当社のような小さな会社が参入できたことは奇跡と国土交通省でも言われた」と村井さん。
「バスで人の役に立てるかどうか、喜ばれるかどうか」が経営判断の基準という同社。東日本大震災の時は、ボランティアの学生2000人を被災地に無償で運んだ。車内広告は貼らず、地元の園児たちの絵や写真愛好家の作品を展示する「ぎんてつギャラリー号」を運行し、地域のコミュニケーションスペースとしても活用。観光バスでは日本で2台しか現存していない昭和レトロのバスを所有するなど、ユニークな企画にも取り組む。
「昨今バス事故が相次ぎ、バスへの信頼が低下している。バス好きがつくった会社として、世間からの信頼を取り戻したいと思っている」と村井さんは意気込む。