氷点下の風景を指先で描く画家・土屋裕正さん「パステル絵画展」-―国立で

土屋裕正さんのパステル画「雪煙・空」

土屋裕正さんのパステル画「雪煙・空」

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 国立のライブハウス「地球屋」(国立市東1、TEL 042-572-5851)で11月2日より、画家・土屋裕正さんの個展「パステル絵画展」が開催されている。

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 同店は、有名無名を問わず、国内外の幅広いジャンルのアーティストを招いて、定期的にライブを開催している。土屋さんの個展を開催するのは2回目。

 土屋さんは国立市出身で、20代のころから東南アジアやアフリカ諸国の風景をパステルで描き続けてきた。ここ5年間は主に信州の上高地など、国内の雪山の風景を描くことが多く、年間約100日を雪山で作品制作に当たっているという。「油絵などほかの画材と違って、パステルなら絵の具が乾く時間を待たずに、刻々と変わる雪山の自然をその場で描くことができるのでは、と思ったのがきっかけ。スケッチブックのページが埋まる約20日間、山小屋やテントに滞在して毎日絵を描き、画材がなくなると下山する」と土屋さん。

 「目の前に広がる風景をリアルに描きたい」との思いから、氷点下20度の吹雪の中で絵を描くこともある。指を使って描くため、時には画材が持てなくなるほど指先が冷えるが、「山小屋の人たちに、凍傷にならないための知恵などを教えてもらいながら描いている」という。新雪が砂塵ぼこりのように風に舞う光景をそのまま切り取ったかのような作品にするため、画用紙の上にパステルの粉を散らし、実際に風の吹く方向に粉を流すなど、技法もライブ感を大切にする。「雨の中で描けば滴が、風の中では飛んできた松の葉などが付着する。氷点下で画用紙に定着剤を吹き付けるとその瞬間に凍って、よく見ると放射状に画用紙に広がっている。パステルの場合、表面の凹凸をならすことが多いが、自分はあえてそうしない技法で、立体的に仕上げる。過程の環境もすべて含めて作品」と土屋さん。

 同展開催の1週間前まで、山に登っていた。「制作の最中は、だれかに声をかけられても、山の小動物がすぐ近くまで寄ってきても気づかないこともある」というほど集中して描いたという、24点の展示作品の中には、今年降ったばかりの新雪を描いたものもある。同店でライブを行ったミュージシャンのひとりは、土屋さんの作品を見て「厳しい自然環境で描いているにも関わらず、とても優しいタッチでびっくりした」と、ステージ上で感想を述べた。

 「厳しい自然が時折見せてくれる美しさや優しさに心を引かれ、感動する。その瞬間の風景をこれからも描き続けたい」と土屋さん。「何日も人と話さずに制作に打ち込むことも多いので、地元の街に帰ってきて、温かい雰囲気の店で人と触れると元気をもらえる」と店内を見渡した。

 開催期間中は、通常ライブが開催される夜間営業時間のほか、昼間の「ギャラリータイム」にも鑑賞が可能。営業時間は、夜の部=19時~翌2時(月曜定休)、昼の部=12時~16時30分(11月3、8、9、14、15、16日のみ)。今月16日まで。

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