立川のダイニングバー「Selfish(セルフィッシュ)」(立川市柴崎町2)が7月1日で20周年を迎えた。
立川駅南口から徒歩5分、諏訪通りの路地裏にあるガラス張りの同店。店内は、キッチンを「くの字」型に囲むカウンター10席と、ゆったりとしたテーブル席7席を備える。メニューは、ごく一部の定番を除き、利用客のリクエストに合わせて店主・松本享(あきら)さんが即興で作り上げる。「小腹がすいたから洋食のご飯物が食べたい」「このお酒に合う一品を」などと伝えると、松本さんが、その日お薦めの食材で自由にアレンジして提供する。
松本さんは福生市生まれ、立川市若葉町育ち。高校卒業後、料理好きの母親の影響で吉祥寺の調理専門学校へ進み、卒業後はフレンチシェフとしてキャリアをスタート。明治記念館をはじめとするホテルの結婚式場やレストラン、ルームサービスなどで腕を磨き、グランデュオ立川(柴崎町3)の洋食店でも経験を重ねた。
2005(平成17)年、37歳で独立。19歳の頃から思い描いていた自分の店を、現在の場所に開いた。店名の「セルフィッシュ」は、漫画「スラムダンク」のせりふから。当初はフランス語で名付けようと考えていたが、「意味が伝わらなければ意味がない」との言葉に背中を押され、「自分勝手な店があってもいい」「オリジナリティーのある店にしたい」との思いで松本さん自身が命名した。
「お客さまも『わがままになっていいんでしょ?』という意味で捉えててくれている。当初は市場で『何の魚?』と言われたこともある」と松本さん。常連客の一人は「セルフィッシュな松本さんの人柄と、自分のわがままをおいしい料理で応えてくれる、この店が大好きで20年通っている」と話す。
メニューがなくなったのは2022年のこと。当初はフレンチをベースにした20~30種類の料理を用意していたが、フランス料理が多かったこともあり、メニューを見ただけでは料理のイメージが湧きにくく、「知らない」「分からない」「恥ずかしくて聞きづらい」などの声が寄せられた。そうした中、常連客の一人が口にした「メニューなんてなくてもいいのでは」という一言が転機となり、カウンター越しに客との会話を楽しみながら即興でメニューを生み出す現在のスタイルが生まれた。
メニューは、「店主おまかせおつまみ」(2種=950円、3種=1,050円)、「オムジンジャー」(1,200円)、「生ハムとチーズのスティック春巻き」(270円)など。
コロナ禍や自身の体調の変化などを乗り越えて20周年を迎え、周年パーティーには多くの常連客が訪れた。「物価高や気候変動により正直厳しいことも多いが、いらっしゃるお客さまのために明かりをともし続けるので、足を運んでいただければ」と呼びかける。
営業時間は18時~24時。