歴史教科書に掲載されている日本画「大政奉還」を描いた絵師の展覧会「邨田丹陵(むらたたんりょう) 時代を描いたやまと絵師」が1月13日、たましん美術館(立川市緑町3)で始まった。
丹陵は、明治、大正、昭和にかけて日本画の手法を用いて作品を残した、立川にゆかりのある歴史画家。関東大震災に遭った後、東京府下の北多摩郡砂川村(現在の立川市砂川町)に転居。中央画壇から意図的に距離を置き、名声を欲さず、立川で質素な暮らしの中で気の赴くままに描いたという。「大政奉還」の日本画も砂川村に構えた画室で1935(昭和10)年に完成させた。
同展は、30代半ばの早すぎる引退の結果、美術史から長く忘れ去られることになった丹陵の初めての長期間にわたる展覧会。丹陵の代表作「《聖徳記念絵画館壁画下図「大政奉還」》」(明治神宮蔵)や、《小早川隆景公仮寝図》(三原市所蔵)の展示など、64点の作品を前期・後期と総入れ替えして展示する。担当学芸員が展示の見どころを解説するギャラリートークも開催(申し込み不要)。1月20日、2月11日・25日、3月9日の14時30分~。
担当学芸員の齊藤全人さんは「当展では、明治後期以降の時代の変還の中で、日本古来の史実をテーマにした歴史画というジャンルが果たした役割を探る。歴史画は綿密な調査をして長期間かけて制作。『大政奉還』の画も丹陵と弟子で何度も二条城の現地に行って部屋の飾りの金具を拓本したり、徳川家に出入りし徳川慶喜の写真を借りたり、刀を写生するなど調査に時間をかけたが、震災での資料焼失や自身の病を乗り越え、13年の年月をかけて制作された」と話す。
併せて、丹陵の砂川村での生活の様子も写真で展示する。齊藤さんは「砂川村では、幼少の頃から親交のあった砂川家に世話になり、500坪の土地で菊の栽培をするなど、悠々自適な半生を過ごした」とも。
立川市産業文化スポーツ部長の井上隆一さんは「中央画壇から距離を置き表に出てこなかった丹陵だが、当展を企画するに当たり、砂川家の子孫をはじめ、丹陵とゆかりのある方たちが立川にたくさんいることが分かった。多くの方にご覧いただき、丹陵の魅力を知ってもらえれば」と呼びかける。
前期は2月18日まで、後期は2月24日~3月31日。開館時間は10時~18時。入館料は、一般=500円、高校生・大学生=300円、中学生以下無料。月曜休館。