立川の石田倉庫で活動する金属造形作家、小沢敦志さんの作品「一冊の街」が、5月に移転する同市の新庁舎(立川市泉町)1階外構に設置された。
同作品は、全国公募で応募のあった45作品の中から選ばれたもので、幅4メートル、奥行3メートル、重さ900キロの大きな鉄の絵本。開いたページに、熱した鉄の廃材をハンマーでたたいた「ペラペラのオブジェ」約150点が張り付けてある。廃材はもともと、同市内の学校で使われていたいすや家庭用ガスコンロ、自転車のカゴなど、市民の生活の中から出たもの。使われなくなった道具や生活用品に付いた傷やゆがみに「人の手を経た道具の記憶や街の営み」を感じた小沢さんは、それらを作品としてよみがえらせ、1冊の本に集約することで「現代の立川の姿」を映すモニュメントを作り上げた。
「人が使った物が廃品になり、再び人の手で新たな物に生まれ変わるという一連のストーリーがテーマだったので、多くの人の手が介在するワークショップに力を入れた」と小沢さん。昨年の10月以降、同倉庫のアートイベントや市内の中学校で、参加者がスチール製品をハンマーでたたく作業を体験できるワークショップを開き、子どもから高齢者まで幅広い年齢の参加者が作品制作に参加した。
「子どもたちが大きくなってから、あれは昔自分がたたいたものだと次の世代に語り継げるような展示作品にしたかった。大型作品ということもあり、制作過程では大変なことも多々あったが、多くの人たちとの交流の中で無事完成し、市役所という街の核となる場所にふさわしい、意味のあるものを作ることができた」とも。