パルシステム連合会が企画委員を務める「ひきこもり広報事業」の一環である「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン」が8月23日(土)、ビジョンセンター横浜みなとみらい(横浜市西区)で開催されました。会場とオンラインで243人が参加し、演出家の宮本亞門さんによるワークショップやひきこもり経験者と支援者のパネルトークを通じて当事者のさまざまな思いに触れ、理解を深めました。
一人ひとりの折れ線グラフ
ひきこもりVOICE STATION全国キャラバンは、11月8日(土)にかけて神奈川、高知、秋田、新潟、奈良、大分の6県の会場で開催されます。社会の多様性への不寛容に違和感を持ち、心にブレーキをかけ、ひきこもり状態にある人たちへの理解を広めるイベントです。
スタートを切った神奈川県の横浜会場では、クリエイティブプロデューサーを務める宮本亞門さんのファシリテーションで「人生ドラマグラフワークショップ」を実施しました。人生ドラマグラフは、ひきこもり経験の当事者や家族が自身の過去を振り返り、モチベーションの上下を表します。自身もひきこもりの経験をもつ宮本さんの人生ドラマグラフを皮切りに、8人の人生ドラマグラフを当時の気持ちなどを宮本さんと対話しながら紹介しました。
宮本さんは実家が新橋演舞場前の喫茶店で、芸能が身近にあったことから、日舞や仏像鑑賞、茶道に興味を持ち、幼いころからたしなみました。アイドルなどの話題で盛り上がる同級生に嫌われないようにと、周りに合わせ自分を演じるうちに、友達ができなくなり孤独になっていったと話します。高校入学後に1年間ほど自室に鍵をかけひきこもるようになりました。
自身がひきこもっていることを理由に両親が口論となり、酔った父親が母親に暴力を振るい悲鳴を聞いたことをきっかけに宮本さんは部屋から出ました。父親に連れていかれた精神科の医師に、学校に行きたくないことや自身の話を全て「良いね、面白いね」と受け止めてもらったことで、登校できるようになりました。
宮本さんは、ひきこもっていた時にクラシックやミュージカルを繰り返し聞いていたことで、舞台を目指すようになりました。初日を迎える前日に母親が脳いっ血で亡くなり、自分を信じてくれていた母親から「バトンを受け取った」と受け止め生きてきたグラフを紹介しました。
▲自身の人生ドラマグラフを紹介する宮本亞門さん
▲8人が人生ドラマグラフを紹介
宮本さんに続き、高校卒業後25年間ひきこもり、母親の認知症をきっかけに支援につながったという当事者や、うつ病の診断を受け外出できなくなった息子を見守る母親など、それぞれの人生ドラマグラフを紹介しました。参加者たちは、グラフで語った自身や家族のひきこもり体験を宮本さんの演出指導の下朗読劇にし、会場で披露しました。
▲朗読劇を演出する宮本さん
▲家族から言われ傷ついた言葉などを再現
朗読劇は、当事者の過去の体験や思いを他の参加者が演じました。自らの苦しさを言葉にし、他者が語ることで客観視しながら追体験した当事者は「言葉とともに当時の感情がよみがえる」「家族の足音を気にしながら冷蔵庫をあさっていた自分が怪しげに見えた」など振り返りました。
宮本さんは「誰もが異なる人生のドラマがあり、封印しないと生きていけない瞬間もあると思います。相手には違う生き方がり、全ての人に認められる必要もありません。固定概念を捨て、自分らしくカラフルな人生を歩いてほしいです」とワークショップを締めくくりました。
心を大切に「自律」から「自立」へ
イベントでは、ひきこもり支援に携わる4人のパネラーが「自立?自律?生きやすい社会はどっち」とのテーマで対談しました。支援団体のNPO法人パノラマ理事長の石井正宏さんの進行で、厚生労働省が発行したひきこもり支援ハンドブックの検討委員会委員長を務めた長谷川敏雄さんと経験者であり支援者の奈良橋修さん、岡本圭太さんが話し合いました。
過去のひきこもり支援は、当事者が就労し、経済的に自立して納税者となることをゴールとしていたと長谷川さんは話します。自分を大切にし、主体的に社会や他者との関係性を構築していく自律を飛び越え、自立を促す社会的価値観を変える過渡期にあると言います。
奈良橋さんは、ひきこもっていた当時は「自分は世の中で生きて行けないと思っていた」と話しますが、ライブハウスでの活動など好きなことが自律につながり、活動資金を得るため自立にたどり着きました。岡本さんは、医療機関などの公的制度を活用したことで就労につながったため、ハンドブックにある自律の考え方に驚いたと話します。自律から自立に向かうには欲望がエネルギーとなるので、些細なことからでも自分の興味を見つけ、漫画を読んだり、筋トレをしたり、少しずつできることが増えていくといいと2人は伝えてくれました。
社会とかかわり人に認められることは、自己肯定感が上がるきっかけになります。地域でも祭りやボランティアなど参加できる場を増やし、ひきこもりは特別ではなく、誰にでも起こりうると発信し続けることが重要としてディスカッションを終えました。
国際協同組合年に生協として理解広める
ひきこもりVOICE STATION全国キャラバンは、厚生労働省が主催し、文部科学省が後援します。当事者や家族、支援団体など知見を有する委員が参加し、企画が検討されています。パルシステムは生活協同組合の立場から、より多くの消費者に「ひきこもり」への理解を広めるため参加します。
各会場では、当事者や地域、家族との連携や表現活動による生きづらさの緩和など、それぞれのテーマを設定します。第1部は、開催地域の支援団体や経験者、家族が登壇し、パネルディスカッション形式で経験を話します。誰もが異なる背景を抱えるなか、お互いの声に耳を傾ける「つながり」が生む安心への一歩を伝えます。第1部の会場のようすは、オンラインで配信します。
第2部のワークショップは、当事者の声をヒントに、誰もが生きやすい地域づくりのアイディアを出し合います。地域の資源を活用し、多様性を受け入れるつながりの形をデザインし、お互いの思いへの理解を深めます。
ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン開催概要
【開催日時、開催都市@会場】
9月13日(土)13:00~16:00 高知県高知市@高知市文化プラザかるぽーと/
龍馬学園イベントホール
※「つながるフェスタ」と同時開催。
9月20日(土)13:00~16:00 秋田県秋田市@秋田県民総合保健センター/2階大会議室
10月11日(日)13:00~16:00 新潟県新潟市@NOCプラザ新潟卸センター/NOCホール
10月18日(土)13:00~16:00 奈良県奈良市@奈良春日野国際フォーラム甍
~I・RA・KA~/会議室1・2
11月8日(土)13:00~16:00 大分県大分市@大分県消費生活・
男女共同参画プラザアイネス/大会議室
【スケジュール】変更の可能性あり
1部 13:00~14:25 パネルディスカッション
・ひきこもり当事者・経験者・家族の体験談のシェア
2部 14:30~16:00 ワークショップ
・当事者の声をヒントに、誰もが生きやすい地域をつくるアイデイア企画
(会場都合で変更の可能性あり)
【申込締切】各会場開催日前日17:00
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パルシステムは多様な立場にある人たちへの理解を広めるため、情報メディア「KOKOCARA」や地域活動情報誌「のんびる」での記事掲載や連携団体の「ひきこもり女子会」開催に協力しています。今回の企画もパルシステムの利用者をはじめ、連携団体などと協力し、より多くの人たちへの参加を呼びかけます。
パルシステムはこれからも、さまざまな状況に置かれる人たちの声に耳を傾け、誰もが暮らしやすい地域づくりを進めていきます。
パルシステムの情報メディアKOKOCARA
https://kokocara.pal-system.co.jp/keyword/homebody/
パルシステム生活協同組合連合会
所在地:東京都新宿区大久保2-2-6 、理事長:渋澤温之
13会員・統一事業システム利用会員総事業高2,604.2億円/組合員総数176.2万人(2025年3月末現在)
会員生協:パルシステム東京、パルシステム神奈川、パルシステム千葉、パルシステム埼玉、パルシステム茨城 栃木、パルシステム山梨 長野、パルシステム群馬、パルシステム福島、パルシステム静岡、パルシステム新潟ときめき、パルシステム共済連、埼玉県勤労者生協、あいコープみやぎ
HP:https://www.pal-system.co.jp/
2025年は国際協同組合年です