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国分寺「カフェスロー」が20周年 「ハチドリのひとしずく」を地域から

カフェスロー代表の吉岡淳さん

カフェスロー代表の吉岡淳さん

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 国分寺の「カフェスロー」(国分寺市東元町2)が5月22日で20周年を迎えた。

「カフェスロー」店内

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 同店は、NGO「ナマケモノ倶楽部」の活動拠点として2001(平成13)年に府中で開業し、2007(平成19)年、国分寺に移転。オーガニックカフェにイベントスペース・ギャラリー・エコマーケットを併設し、地域通貨「ぶんじ」や「暗闇カフェ」などの取り組みも行っている。

 「ナマケモノ倶楽部」は「ナマケモノになろう!」を合言葉に、1999(平成11)年に発足した市民団体(NGO)。環境にこれ以上負荷を掛けない「スローライフ・スロービジネス」を提唱し、一人一人のライフスタイルからの変化を大切にする「100万人のキャンドルナイト」「ハチドリ計画」などのムーブメントを仕掛けるなどして活動してきた。

 店主の吉岡淳さんは「『ナマケモノ』『スロー』という、一見するとネガティブな表現を敢えてすることの意味合いや、不便でもなぜそれが大切なのか。カフェを通じて、環境に負荷をかけない暮らし方を具体的に提案したいと考えた」と話す。

 2001年に府中の自転車店の倉庫からスタートした同店は6年後、家主の事情で立ち退き国分寺に移転。廃工場の内部だけを改装した店内は、床は多摩産材、壁際には土にかえる素材「ストロー・ベイル」を使った席が並ぶ。倶楽部のメンバーで建築家の大岩剛一さんの指導の下、常連客や支援者によるボランティアの協力で、壁側にわらのブロックをケイ藻土で固めて完成させた。

 生活の基本である衣食住を柱に、カフェでは在来種の米、自然栽培・有機の野菜、森林栽培のフェアトレードコーヒーを使った食事を提供。家具はリユース、商品や什器には可能な限り「非プラ」を考慮し、無農薬のオーガニックコットンの製品を販売する。

 吉岡さんは京都府出身。30年間にわたりユネスコで活動し、環境問題や途上国の教育、文化遺産などに取り組んできた。「世界の方ばかりに目が向いていたが、高度経済成長を経て、これからは地域のことに取り組みたい」と定年退職より少し前に退き、長年住んできた多摩地域に活動拠点を移した。「世界が本当に平和になるためには、それぞれのローカルなコミュニティーが幸せになること。そうして築かれたコミュニティーがつながることがグローバリズム」

 今年2月、コロナ不況に際し有志が立ち上げたクラウドファンディング「なくならないで!カフェスロー」では、目標を大きく上回る803万円以上の支援が全国から集まった。「これまで意思を曲げずにやってきたこと、お客さんと一緒に店を作ってきたことへの思いを感じた」と吉岡さん。「コロナは大量生産・大量消費のひどい暮らしの在り様がもたらした。アフターコロナで、元に戻ろうではなく、生き方、暮らし方を見直す機会にしなければ」とも。

 窓際に下がる「ハチドリ」には、この店の掲げるメッセージが込められている。「自分の暮らし方がひどい環境を作っていると誰も思っていない。同時に自分だけが取り組んでも変わらないとも。燃える森に一滴ずつ水を運んだハチドリのように、自分のできることで世の中を変えることができる。その気付きの場所であり続けたい」

 営業時間は11時30分~17時。月曜定休。祝日の月曜は営業し火曜休み。

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