東京経済大学(国分寺南町1)が東日本大震災後の「変わったこと」「変わらなかったこと」について大学生の意識調査を実施し、結果を公表した。
調査を行ったのは、コピーライター出身で、博報堂生活総合研究所エグゼクティブフェローである同大学コミュニケーション学部教授の関沢英彦さん。関沢さんは昨年4月、新入生を対象に震災に関するアンケート調査を実施。その結果、「人々の助け合いの大切さをより強く感じた」という回答が92.2%と最も多く、続いて「生命の大切さをあらためて感じた」(89.0%)、「これからの日本のあり方が変わると思う」(76.9%)、「これからの自分の生き方や価値観が変わると思う」(70.1%)という回答を得た。この結果を受けて、関沢さんは、震災を体験して意識が変わった若者たちを「3.11世代」と名付けた。
今回は、震災から10カ月後のアンケートとして、コミュニケーション学部の2~4年生101人を対象に意識調査を実施。回答は自由回答。人との関係については「家族の大切さを感じるようになった」「朝家族と別れるときに『これが最後かもしれない』と思うようになった」「収入の多さよりも家族を思う人と結婚しようと思うようになった」と「人とのつながり」を重視するようになった意見が寄せられた。
そのほか、人生・日々の行動については「かつては、何も起きない平和な毎日を嘆いていたが、普通の喜びを幸福と感じるようになった」「一日一日を大切にしようと思うようになった」「住む家と働く場所があれば十分なのだと思うようになった」「人生は死と隣り合わせだと言うことが分かった」、エネルギーや物に対しては「原子力発電について興味も関心もなかったのに調べるようになった」「被災地の厳しさを思って昼食を残さない人が増えた」「スマホに緊急地震速報を知らせるアプリを入れた」「歩きやすい靴を履くようになった」といった意見も寄せられた。
日本・外国・政治に対する意識では、「政府への不安を感じるようになった」「海外とのつながりを強く感じて、他の国の人々ともっと関わりたいと考えるようになった」、情報・文化については、「報道の裏の伝えられていない真実を知ろうと思うようになった」「メディアリテラシーという意味がよく理解できるようになった」とメディアの信頼性への関心の高さや「ニュース・ドキュメンタリーを前よりも見るようになった」「ミクシイだけでなくツイッター・フェイスブックも使うようになった」と、メディアの関心の幅が広がったという意見も。
反面、震災が起こっても「変わらなかったこと」として、「自分には震災は無関係だと思っている人が存在すること」「政治の混乱」「就職への不安」などを挙げる回答もあったという。
アンケート結果を分析した関沢さんは「『一人で頑張れる自立心が必要と思う反面、誰かと一緒にいたいという気持ちが高まった』という回答に、学生たちの揺れ動く気持ちが要約されていると感じた。情報をうのみにしないで、自分で確かめるたくましさと、他者とのつながりを求める欲求が共に強まった。少なからぬ人たちが『死』を身近に考え、日常の大切さを感じるようになったことは大きな変化と言える」と話す。