小平の仲町公民館(小平市仲町)で現在、妹島和世建築設計事務所(江東区)による「建築と環境」講座が行われている。
同社が市内に建設中の公民館と図書館の複合施設「なかまちテラス」(仲町)のオープンに向け、市民を対象に開講した。「この機会に市民の方になかまちテラスを始め建築について知ってもらうといいのではと考えた」と同館長の紅(べに)さん。講座を担当する同社の松沢一応さんは「建築をどのように考え作っていくかということを紹介できればと思い引き受けた」と話す。
10月~12月の10回で、同社と関係者が各回、講師を務める。金沢21世紀美術館(石川県)や瀬戸内の犬島(岡山県)・豊島(てしま)(香川県)プロジェクトを始め、進行中のものや新国立競技場案などこれまで同社が取り組んできた数々のプロジェクトを紹介。ほかにも外部空間と建築との関係を考える「新しい環境」や目指す設計デザインをいかに合理的に実現させるかという「建築の美学」、「植裁と建築」など建築に関する幅広い内容がテーマ。1回2時間で、建築に興味がある人や仕事にする10代~70代の受講者25人からは多くの質問が飛び交い、活気のある講義となっている。
なかまちテラスがテーマの回では、敷地の見学からプロポーザルまでの過程、実際に検討された複数の設計案に加え、現在の工事状況など同館に関する一連の資料がスライドで紹介された。複合施設という特性を生かし「新しい情報との出会いの場」であり、そのためにも「気軽にアプローチできる公園のような建物」を実現するために各段階で重ねられた検討などの話を受け、使いやすさや設計に関する質問が7人から出され40分ほど応答が続いた。
松沢さんは「建物はできてしまえば完成したものとして受け入れるが、それまでのプロセスの中でいろいろな思いや出来事があり、そこが建築の面白いところ。講座では我々の考えていることや思いを伝え、コラボレーションさせていただいた専門家の方々の違った視点からの説明を交えて、建物ができるプロセスを紹介できればと思っていた。参加者の方には建築の面白いところを少しでも理解いただけたのでは」と振り返る。
同講座に参加する30代女性は「第一線で活躍される方々に直接話を聞くことができ大変貴重な機会。2時間10回の講座なので、普段なかなか聞くことができない話などいろいろな話を聞くことができ、毎回とても楽しい。受講できて本当によかった。事務所の方々と公民館には本当に感謝している」、60代女性は「夜間講座だが受講者に若い女性が多くて驚いた。あらゆる面から建築を知ることができ、建築の大変さがわかった」と話す。
なかまちテラスは2015年3月13日に開館式典を行い、同14日から運用を始める。松沢さんは「なかまちテラスもいろいろ難しいプロセスがあったが、多くの方の協力のもと形になった。しかしそれが終わりではなく始まり。地域の方々に楽しく使っていただけるように、これからも皆さまと良い建物を目指していきたい」と意欲を見せる。