立川の石田倉庫(立川市富士見町2)で10月18日・,19日、オープンアトリエ展「石田倉庫のアートな二日間」が開催され、4,000人以上の来場客でにぎわった。
会場となった通称「石田倉庫」は、井戸工事会社「石田産業」(同所)の敷地内にある2階建て倉庫2棟とビル1棟で、25年前からより芸大の学生らが、小麦粉の倉庫をアトリエとして使用するようになって以来、現代美術家・美術造形家・家具工房・陶芸家・金属工芸家など、多様なジャンルのアーティストが集まって作品を制作しているエリア。
同展は、普段あまり見ることのできない、芸術家のアトリエやモノ作りの現場を開放し、作品を展示・販売するもの。5回目の開催となる今回は、同倉庫以外の場所を拠点にしているアーティストも含め、41人のアーティストが参加した。「アートの世界を身近に感じられ、大人が楽しめる文化祭のようなつもりで企画した」と家具工房「木とり」の山上一郎さん。
テーマは「みんなのいろ」。葉画家・群馬直美さんの描く、植物をモチーフとした「緑」の作品、宮坂省吾さんの、染色とアクリルを使った立体作品と写真で表現した「空の青」、寺口宏祐さんの制作した、麻ひもを漆でコーティングするという奈良時代の仏像技法を用いたワニの立体作品、「子どもから大人に変わる多感な時期を、白い空間で表現した」という栗真由美さんによる金属工芸など、それぞれのとらえる「いろ」のイメージを自由に表現した。
美術造形チーム・アーティーズは、はがれた塗装やさびの風合いなどを施し、新しいものをわざと古いものに見せる美術手法「エイジング」作品を公開。来場客は子どもから高齢者まで幅広く、さまざまなアイディアと個性にあふ溢れた作品を鑑賞し、作品について質問するなど、作家と交流する光景も多く見られた。
茂井健司さんのアトリエスペースでは、鏡を使った作品に触れた来場者の「立つ位置や鏡をのぞき込む角度によって、中に映る色が変わり、とても不思議でおもしろい」という声も。「ここで作品を作るようになって4年だが、石田倉庫は居心地がよく、魅力的な場所。個人作業をしていても制作に息詰まったらすぐ近くに仲間がいて、話をするうちにヒントが見つかることもある。年に1度のお祭で、開放的な雰囲気の中でお客さんと交流できるのも楽しい」(栗さん)。
「設置するのは今回が初めて」(山上さん)という会場中央の野外ステージには「木とり」が製作した小屋を置き、2人の画家が観客の目の前でペインティングを施すパフォーマンスや、コンテンポラリーダンスなど、ライブ感のあるアートパフォーマンスを展開したほか、トークイベント「立川のみらい」が開催され、30人ほどの聴衆が、専門家らによるアートについての考察に耳を傾けた。「ステージができたことによって、イベントとしての一体感がより一層生まれたと思う」という客の声も。
「キーマカレー」や「炙りチャーシュー」「タイヌードル」「焼き鳥」など、会場内には屋台が立ち並び、アート鑑賞の合間に野外で飲食を楽しむ人の様子もが多くん見受けられた。バー・スペースとして開放した「木とり」の工房内では、ピアノとフルートの生演奏も。隣の日野市から来たという家族連れは「昨年来た友達に良かったと勧められて初めて来たが、想像以上に盛大で本格的」と感想を寄せた。
「両日ともフードメニューが午後3時には完売するなど、来場者の数も昨年よりずっと多く、驚いている。色という無限の広がりのあるテーマで、作品も食べ物も、それぞれのいいカラーを出していたと思う。企画する側もお客さんもみなが楽しめる雰囲気の中で、無事にイベント終了を迎えられて良かった」(山上さん)と振り返る。