武蔵野美術大学美術館(小平市小川町1)で5月25日から「絵の始まり 絵の終わり 下絵と本画の物語」が開催される。
日本画を完成させるために描かれる下図や素描などに着目し、本画に至るまでの画家の思考錯誤の過程や作品に込められた意図を読み解くことで、日本画への理解を深めようと企画した同展。同大学の玉蟲(たまむし)敏子教授が監修を務める。
玉蟲教授は「作家が絵を修正して決定し、これで完成だと思うゴールまでに起きるさまざまな出来事を一つの物語としてとらえようと考えた」という。
「狩野家と河鍋暁斎(かわなべきょうさい) 江戸~明治における模本と下絵」と題した展示では、幕府の御用絵師だった狩野家に伝わる動物が描かれた模本や、卓越した筆力による浮世絵や風刺画などで知られる河鍋暁斎の下絵を紹介する。暁斎の「山姥(やまんば)と金太郎 下絵」は、紙を貼り合わせて顔の向きや表情を描き直した跡や、「朱」、「チャ」など、色の指定をする文字が書きこまれ、完成までのプロセスが見てとれる。
竹内栖鳳(たけうちせいほう)、土田麦僊(つちだばくせん)、村上華岳(むらかみかがく)、野長瀬晩花(のながせばんか)ら京都画壇の画家、菊地養之助、宮本十久一(みやもととくいち)、四方田草炎(よもだそうえん)ら会津地方や多摩地域などで活動した在野の画家、福田豊四郎、奥村土牛(おくむらとぎゅう)、毛利武彦ら同大学で後進の指導にあたった画家たちの下絵から近代日本画の推移をたどる展示も。村上華岳の「裸婦 画稿」は、山種美術館が所蔵する重要文化財の「裸婦図」の下絵で、背景や顔の輪郭を胡粉(ごふん)で白く塗って修正を重ねており、細部へのこだわりがうかがえる。
内田あぐり、山本直彰ら同大教員の作品から現代日本画の展望を探る展示では、墨と木炭を使い一つの画面の中で変化する人物を捉えた桑原理早の作品「毎日」などから、下絵を作らずに本画を描く日本画家が増えたことを示し考察している。
5月28日は、「絵の始まり 絵の終わりをめぐって」と題し、武蔵野美大から玉蟲教授をはじめ、いずれも日本画家の尾長良範教授、西田俊英教授、山本直彰教授を招き、日本画制作にまつわるレクチャー&トークイベントを開く。開催時間は16時30分~。参加無料。
開館時間は10時~18時(土曜、特別開館日は17時まで)。日曜・祝日休館(6月14日、7月20日、8月16日は特別開館)。入館無料。8月16日まで。