国立のビール醸造所「KUNITACHI BREWERY(クニタチブルワリー、略称=くにぶる)」(国立市東3)が、10月29日にビール・発泡酒の製造免許を取得し製造を開始して2カ月がたった。
くにぶるのビールが購入できる「SEKIYA TAP STAND」(国立駅南口)
同所は、創業110年を迎えた酒店「せきや」(中1)のグループ会社「草舎」が経営するクラフトビールの醸造所(ブルワリー)。醸造所内は、麦芽を糖化・ろ過・煮沸して麦汁を「仕込む釜」と、麦汁に酵母を加え温度管理をしながら「発酵させるタンク」が並ぶ。醸造設備は1000リットルと200リットルの2種類。大量に醸造できる設備に加え、小さめの醸造設備を造ることで、フルーツを使った手作業が多いビールなど、多様なビールに挑戦できるのが特徴だという。
醸造長の斯波(しば)克幸さんは府中市西府町出身。音楽学校卒業後、DJ活動を軸に楽器店の店員、啓文堂書店の店員、無印良品の店員、介護職、清掃、公営住宅の管理などいろいろな仕事を経験した。日本の文化や歴史を深く探る中で発酵文化と出合い、ビール醸造に興味が向かい、静岡で醸造家として修業。それから数年後、国立市内で開かれた静岡県のビールを集めたイベントで、「せきや」酒類販売部門の矢澤社長に「国立発のブルワリーの醸造長を探しているが興味はないか」と声を掛けられたことから、斯波さんが「くにぶる」の醸造長となり、関会長の「自社で酒造りをしたい」という思いが形となった。
昨年11月1日に醸造を初めてから現在までに発売したビールは、他のブルワリーとコラボした「あわい」(AOI BREWING=静岡市)、「ピクニック アンド ビア」(アンドビール=杉並区)、「たまらん坂 Hazy IPA」(カンパイブリューイング=文京区)、オリジナルビールの「1926」「るつぼヘイジー」「世界は点滅するモザイク模様のように」「INDIVIDUAL ORCHESTRA(インディビジュアル・オーケストラ)シリーズ」など10種。
昨年11月6日にオープンした国立駅南口の「SEKIYA TAP STAND」(中1)で提供するほか、「THE DODO HOUSE」(目黒区)、日ノモトビアパーラー(千代田区)、麦酒屋るぷりん(中央区)などの飲食店での取り扱いも広がっている。
「ビール造りは音楽に似ている。麦芽が土台となるドラムやベース、その上にホップや酵母が旋律やハーモニーを奏でる。ホップの種類や酵母との相性で音楽のように多様に変化する」と斯波さん。
1月9日に発売した「インディビジュアル・オーケストラ」シリーズのラベルには、指揮者姿の斯波さんの後ろ姿を描く。シリーズ3作目の「同#3」は「アルコール度数は2.5%と低いが飲み応えがあり、グアバ・マンゴー・アプリコットの3種類のフルーツピューレを加えたフルーティーなビール。白身魚、野菜サラダなどライトな食事に合う」という。
「ビールは鮮度が大切。まずは国立の方にたくさん飲んでいただき、それから多摩エリア、東京と少しずつ広げていきたい」斯波さん。「伝統を尊重しながら新しいエッセンスを加えていきたい。きれいに発酵させたドリンカビリティー(飲みやすさ)を大切に、ビール好きな方にも親しんでいただけるビールを造りつつ、ビールが苦手な人も自分の好きな味を見つけられるように、いろいろな種類を造っていくので楽しんでいただければ」と利用を呼び掛ける。