東大和市駅そばに9月16日、自家製のベーグルとスコーンの専門店「クリカ食堂」(東大和市向原6)がオープンした。
ベーグルは国産の強力粉、蜂蜜、国産の塩、少量のイーストと水で作った生地を使用。店主の栗栖佳代さんは「ベーグルもスコーンも低温長時間発酵をして小麦のうま味を引き出した。ベーグルはモチッ、ムギュッとしながらも食べやすい食感に、スコーンはベーキングパウダーを使わずイースト発酵をさせて、外はザクッと中はホワッとした食感に仕上げた」と話す。「定番のチョコやナッツ、季節の食材を使ったものなど一期一会を楽しんでいただけたら」とも。
商品は、「ブルーベリークリームチーズ」(320円)、「ダブルチーズ」「いちじくクルミ」(以上250円)のベーグルのほか、「プレーンスコーン」(180円)、「チョコスコーン」(230円)、「ホワイトチョコとクランベリーのスコーン」(250円)などをそろえる。
栗栖さんは長崎県出身。大学卒業後、都内の一般企業でコールセンターに6年間勤務。「リアルに人と接する仕事がしたい」という思いと、体調を崩して食事を見直すことがきっかけとなり、飲食の仕事に興味が沸きフードコーディネーターの資格を取得。退職後、友人のケーキ店の立ち上げや、「アフタヌーンティー」が運営する料理教室の講師業に携わり、パン教室にも通ってスキルを磨いた。
出産を機に退職するが、自作のパンや焼き菓子を友人に振る舞っては試作を繰り返した栗栖さん。自宅のある東大和市で「マママルシェ」に出店し、ベーグルの人気に手応えを感じ、自宅で料理教室「粉ものづくりと保存食づくりの会、クリカ食堂」をスタート。
並行して、「学園坂タウンキッチン」(小平市)で開かれた「マルシェをつくるワークショップ」の参加し、そこで知り合った仲間とマルシェイベント「つくるひと」を企画。同所のシェアキッチンでベーグルを作り、不定期でマルシェでの販売を始めた。
子どもの進級を機に2016(平成28)年から「学園坂タウンキッチン」でも週1回、ベーグルとスコーンを販売。開始から4年目を迎えた昨年3月に緊急事態宣言を迎える。1カ月半の休業を経て販売を再開し、イベントや自宅教室がコロナで中止になる一方、ベーグルとスコーンの販売は作っても作っても売れる状況が続いた。「出掛けることが制限される中で、顔の見える人の作ったものが求められているのを感じた」と栗栖さん。「もっと作って食べてほしい、場所が欲しいという思いが強くなった」ことから出店を決意した。
友人たちがペンキを塗り、ようやく迎えたプレオープンでは、友人や「工事中から気になっていた」という近所の人たちが多く訪れた。現在の営業日は週2回。1日350個以上を焼いているベーグルやスコーンは、個数制限を設けているにもかかわらず、開店後2時間足らずで売り切れてしまうという。
「営業日については悩んだが、ライフステージの変化に合わせながら、自分やスタッフの家族との生活も大切にしようと決めた」と栗栖さん。「多様性の一つのかたちと捉え、育児時中など時間に制限がある中で、出店を悩んでいる方のモデルケースになれたら」とも。
「いずれは店内でワークショップや、マルシェイベントで知り合ったクリエーターたちの販売会など、人が活動したり、つながったりできるような場所にもしていきたい。現在は完売が続き心苦しいが、長い目で見ていけたら」と意気込む。
営業は祝日を除く水曜・木曜の12時から完売まで。