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国立のシェア商店「富士見台トンネル」が2周年 記念ビールも発売

「富士見台トンネル」オーナーの能作(のうさく)淳平さん

「富士見台トンネル」オーナーの能作(のうさく)淳平さん

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 国立・富士見台団地商店街のシェア商店「富士見台トンネル」(国立市富士見台1)が11月2日で2周年を迎えた。

2周年限定クラフトビール「DIG NEW YOU」

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 同所は、国立駅と谷保駅を結ぶ大学通り沿いにある団地の中の商店街の一角にある「キッチン付きシェア商店」。中東の菓子「クナーファ」、みそ汁と発酵料理やジビエなどの飲食店やフラワーアレンジメントのワークショップなど、さまざまな店が毎日入れ替わる。

 トンネルのように突き抜けた空間には、キッチンと細長いカウンターテーブル。オーナーで建築家の能作(のうさく)淳平さんの設計事務所も兼ねている。

 能作さんは富山県高岡市出身。大学で上京し、自由が丘、中目黒、西麻布など、職場も住まいも都心、しばらくは23区外を知らずに過ごすが、高円寺に転居し中央線沿線の居心地の良さを実感。父親になったことを機に、妻の実家に近く、子育てのしやすい立川・国立周辺で、たまたま募集していたリノベーションができる物件に出合い、2014(平成26)年、国立富士見台団地の住人となった。

 「住み始めると環境は良いいが、孤立感を感じた」という能作さん。昼間に働いている人の姿が見えない、都心で働いている人が帰って寝るだけのベッドタウンで、サロン的な意見交換ができる場もないつらさ。同時に、都心でバリバリ働いていた妻が子育てを機に転職し、キャリアの生かし方も考え始めた。

 「仕事か暮らしかって時代に合っていないし、女性はマルチタスク得意で可能性もある。街の問題と、うちの問題は同じことではないか。同じような境遇の人がスキル・趣味を生かしたり、起業を目指したり、地域のなかで暮らしと仕事がゆるやかにつながる場所を作ろうと決めた」

 同時期に手掛けた、長崎・五島列島で別荘を兼ねた、私立図書館とカフェを併設するスペース「さんごさん」の仕事がきっかけとなっているという。「建築は箱をデザインする仕事だけでなく、地域の中で広がる生業(なりわい)を一緒に作ることができると実感した」。

 2019年7月、クラウドファンディングに挑戦。127人から目標金額を大きく上回る122万円を集め、同年11月「ゆる市」の開催に合わせて同所をスタートした。現在は、約20人の会員が時間ごとに入れ替わりシェア商店を運営し、能作さんもブランディングやメニューや価格、ブランディングに積極的に関わり「プロ意識を持ったパフォーマンス」を大切にしている。

 オープンから2年がたち「個性がないベットタウンでと思われがちだが、優秀な人材、文化的なもの、水、農作物など、コンパクトな中にいろんな資源があることを実感している」と能作さん。「都心では人が多く、コミュニティーが見えないが、多摩地域はサイズが小さくコミユニティーが見えるし、自分がどう還元できているか実感できる。都心では個人プレーでも、ここではチームプレーが生かせる」とも。

 2周年を記念して限定クラフトビール「DIG NEW YOU」を「KUNITACHI BREWERY-くにぶる-」から発売した。ノルウェーの伝統的な煮沸しない醸造「ローエール」を用いて、数種類のホップとコリアンダーで香りを出した「マイクロヘイジーIPA」。団地らしさを意識し、低アルコールだがうま味を生かした「焼きたてのフワフワのパンのような甘みのある優しい味」に仕上げた。商品名の「DIG NEW YOU」は「掘り下げて、新しい自分を発見していこう」の意味。「無個性なベッドタウンと思っていたが、いろいろな資源が眠っている、掘り起こそう」というメッセージを込めた。

 店先に掛かるのれんには、トンネルの頭文字「T」をデザインした「掘り起こすつるはし」がゆらめく。「富士見台トンネルは、街でのスタートの場所。暮らしと仕事と地域とつなげて郊外の暮らしをアップデートしていきたい。今後は、職住近接に街の資源を生かした旅の要素を加え、他の地域からも入れる開かれたネットワークも展開していきたい」と意気込みを見せる。

 2周年記念ビールは「国立せきや」(国立市中)、「せきやオンラインショップ」で扱う。

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