小金井市在住の会社員が商品化し個人のSNSで販売を始めた「席ゆずります」マークをあしらったタグが全国に広がりを見せている。
マークを発案・商品化したのは椎野祐輔さん。「昨年11月、妻の妊娠をきっかけに、これまでは『席に座っている側』だった自分が『席を譲ってもらう側』の立場を体験し、双方の思いを知ることになったのがマークを作ったきっかけ」と椎野さん。
「ある日、妊娠中の妻が年配の女性に席を譲られたことで、感謝と同時に『周りに座っていた若い方々がどうして席を譲ってくれなかったんだろう』と思ってしまった。『自分が他の若い方に声を掛ければよかったのか』とも思ったが、それはさすがに無理」と振り返る。
「妻の妊娠以前は、自分も席に座っていた側だったので、席を譲るという意思表示ができるもの、いわば逆マタニティーマークのようなものがあったらいいのでは」とマークをあしらったタグを製作し、SNSで実費販売を始めた。昨年11月の販売開始以降、全国で1万個以上が購入されており、経産婦、父親、看護師、看護学生などからの購入が多いという。企業が一括購入し従業員に配布した例も。
自分が席を必要としているはずのヘルプマーク所持者や高齢者が「このマークを付けることで『どうぞ』の一言を言い出しやすくなった」「座ったとき、周囲に席を必要としている人がいないか気にするようになった」などの感想が寄せられているという。経産婦からは「自分が妊婦だったころ、多くの人に席を譲ってもらったので今度は自分が譲る番」「自分が妊娠していたころ、このマークがあったらどれだけ救われていたか」という声もあるという。
こうした声を受け店舗販売も検討。販売店に負担が掛からないよう、在庫リスクが無い企画で募集したところ、現在までに全国で約30店が協力している。
椎野さんは「このマークの存在が多くの方に届けば、妊婦さんやヘルプマーク所持者、高齢者の方々が安心できる空間が増えていくと思う。意思表示した優しさは必ず連鎖するので、店頭に置いているだけでも、多くの人に優しさが届くはず。賛同者の方たちと一歩ずつ進めていければ、世の中を変えることができると思うので、多くの店に協力していただければ」と呼び掛ける。
価格は380円と580円(サイズや寄付の有無により異なる)。