倉庫でオープンアトリエ展-新市庁舎飾るモニュメント制作ワークショップも

約3,000人が訪れ、にぎわいを見せた石田倉庫のオープンアトリエ展。

約3,000人が訪れ、にぎわいを見せた石田倉庫のオープンアトリエ展。

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 立川の石田倉庫(立川市富士見町2)で10月24日・25日、オープンアトリエ展「石田倉庫のアートな二日間」が開催され、約3,000人の来場客が訪れた。

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 同所は、画家・美術造形家・家具工房・陶芸家・金属造形作家など、多種多様なアーティストが集まって作品を制作しているエリア。開催は6回目で、地域の恒例行事として定着しつつある同イベントの今年のテーマは「12の部屋」。「みんなのいろ」と題して催された昨年のテーマをさらに掘り下げ、21人の芸術家それぞれの作品テーマとカラーを前面に打ち出す展示内容となった。

 描いた絵の上に染色した布とポリエステル樹脂を重ねる技法で「日常の空」を表現した宮坂省吾さん、「思春期の多感な時期」というテーマを、甲冑(かっちゅう)と白の空間で表現し続ける栗真由美さん、一点物の手作り家具を販売する家具工房「木とり」など、個性豊かな作家の作品が並ぶ中、栗さんがプロデュースした「アートと食のコラボレーション」企画によるフードメニューも充実。葉画家・群馬直美さんと、国分寺の菓子工房「くろねこ軒」の、本に見立てた箱の中に実物さながらの木の葉のクッキーを詰め込んだ「食べる木の葉の美術館」や、美術造形チーム・アーティーズと美術家・茂井健司さんが、カフェ「キュイッソン」とタッグを組み、モロッコをイメージして制作した、発泡スチロールのパーツを一つずつくり抜いて組み立てた屋台など、「作家と料理人が、プロとして互いの作品に刺激を受けながら考案した」(栗さん)というユニークなコラボレート作品が来場者の目を引いた。

 アーティスト自らガイドとなり、全ブースを案内する「アトリエツアー」には、幅広い年齢層の来場者が参加するなど、あいにくの雨模様にもかかわらず、会場はにぎわいをみせた。今回代表を務めた現代美術家の茂井さんは、「実行委員会のメンバーが入れ替わるなど運営に大きな変化があり、試行錯誤の連続だったが、結果的に各々が自分の中に持っていたアイデアを提出し合い、実現できたと思う。大々的な事前告知をしなかったにもかかわらず、多くの方が来てくださって嬉しい」と振り返る。

 金属造形作家で、同イベントの広報担当でもある小沢敦志さんは、コークスで熱した鉄の廃材をハンマーでたたき、「ペラペラ」のオブジェとしてよみがえらせる「鍛造」技法を用いたワークショップを開催。燃え盛る炎とハンマーの音が響く工房には、子どもから高齢者まで、多くの来場者が参加した。ここ3年間で集まったこれらのオブジェは、小沢さんが制作する「鉄の絵本」に貼られ、来年、立川市の新市庁舎外構に「現代の立川の姿」を映す大型モニュメントとして設置される。

 小沢さんは「廃品となるまでのスチール製品は、傷やゆがみといった形で、さまざまな人の手によって扱われてきた痕跡を残している。そういったいわば道具の記憶を掘り下げる作業や、冷たく硬い鉄が火によって熱く柔らかい物へと変化し、新たに人の手によって形を変えるという工程を経て残されたペラペラの鉄は、多くの人の気配や、この街の営みを照らし出す記憶といえる。これらの記憶は、一冊の本に集約することによって、そのまま街の記録となるのでは」と話す。

 「参加型のお祭りという楽しいイベント色も残しつつ、それぞれの展示内容のクオリティーをさらに上げていきたい」と小沢さん。「話し合いによって課題に取り組みつつ、今後も地域に根ざしたオープンアトリエ展を開いていきたい」とも。

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